俺のアパートに着き、水野をベッドに下ろして布団をかけてやる。


 そのまま吸い寄せられるように髪を撫でるが、やっぱり手をがっしり掴まれ、擦り寄ってくる。


 好かれてないのに、ドキドキしてしまう自分が馬鹿らしい。


 喜んでいる自分が馬鹿らしい。


 ワンピース女と違って、ネイルは施されていない、短く切りそろえられた丸っこい爪だ。


 それに、指先が少しかさついている。


 家事をしていると手が荒れてしまうらしく、いつも小まめにハンドクリームで手入れしていた。


 だから、俺の机の上にはハンドクリームが置かれている。


 加えて、昔、包丁で何度も指を切ったらしく傷だらけ。


 荒れて、しかも傷だらけな指を、水野はひどく気にして、あまり手を見られたくないようだった。


 でも、そんな水野が嫌がる手は俺をこんなにもドキドキさせる。


 きっと、それはこの手が魅力的だからだ。


 水野が魅力的だからだ。


 どうして、水野なのだろうか?


 あのワンピース女のほうがよっぽど洗練されていて綺麗だ。


 水野が可愛いとは言っても、所詮は人並みレベル。


 何か秀でた能力があるわけでもないし、馬鹿だし、無神経だし。


 笑顔だって、ただの田舎娘の笑い方じゃないか。


 俺が惚れるような、追いかけるような女じゃない。


 それでも、心底惚れていて、諦めきれず。


 またこいつを追いかけてしまった。


 手に感じる唇の感触と息遣いが艶かしくて。


 水野は寝ているし、俺も酔っているんだ、と心の中で何度も言い訳しながらベッドに座る。


 ギシッとベッドが軋み、起きたのではないかと思ったが変わらず寝息を立てていて胸を撫で下ろす。


 そのまま握られている手を外し、水野の頬を撫でながら顔を近づける。