俺もクリスマスとはタダ飯の日としてしか認識していなかった。


 だが、クリスマスは恋人の三大イベントの一つと聞いたことがある。


 広也の浮かれようからして確かだ。


 なら、これは二人で過ごすチャンスではないか。


 何気なく誘える。


 二人で帰り道に飯を食べて帰るのは日常茶飯事だが、二人だけで、一日中どこかに出掛けたことはない。


 これで、何かが変わることはないがデートをするのも悪くない。


 誘おうと思ったが、今の水野の頭の中は仁との遊園地でいっぱいだった。


 何を着ていこう。


 お弁当はかさ張るかな。


 夜のパレードを二人きりで見られるなんてロマンチック。


 二人きりじゃないだろ。


 客は他にも大勢いる、と言ったら、目を細められた。


 そんな具合で、言えるはずもなく。


 遊園地の件が過ぎてからにしようと思った。


 この間まで仁と会えないし、会っても眠ってばっかりだと、しょげていたのに現金なやつだ。


 そしてクリスマスの数日前。


 火曜日は俺と水野、広也、上原、瀬戸でたいてい昼飯を取る。


 お馴染みメンバーというわけだ。


 学食に足を運ぶと、水野の姿はなかった。