「何か言いたそうだな」



 俺は水野に視線を向ける。


 水野は少し押し黙り、俺を窺うように見る。



「佳苗さんのこと好きになったりしてないよね?」



 はぁ?


 こいつの発言はいつも俺の想像を遥かに上回る。


 俺の表情を見て、水野は慌てて手を横に振る。



「榊田君が初対面でそこまで親しくしてるから、念のために聞いただけなの。心配しなくて良いよね?」



 本当に、こいつは。


 気分は急降下だ。



「お前、いっぺん死んだほうが良いんじゃねぇの?」



 冷ややかに言う。



「仁くんへの当てつけじゃないよね?仁くんは知ってるの?佳苗さんと会ったこと。仁くんは嫌がってなかったって?」



 仁、仁、仁……


 どうして、こうも無神経なことが言えるのだろうか。


 数秒の間に何度、仁、と言えば気が済むのか。


 三人の顔を見てみろ。


 俺を哀れんで見てるぞ。


 お前の発言に呆れてるんだ。


 こいつらにでさえ、引かれること言っているのがわからないのか?



「仁が知らなかったら、どうだって言うんだ?」



「別に、そんなことで二人の仲がどうなるわけじゃないけど、後で知ったら仁くんも気分良くないと思って。仁くんのことも考えてあげて?」



 この馬鹿をどうにかしてくれ。


 本当に救いようのない仁信者だ。



「お前さ。仁に振られても変わらないのな」



 水野の顔が強張る。