車が停まったのは、木造建築のお店の前だ。かなり年季を思わせる建物だが、よく手入れをされているからか、店の前には花などが飾りつけられているからか、古いという印象は与えない。それどころか古ぼけた建物が、趣のある場所へと変化していた。
プレートのかかったドアを開けると、静かなクラシック音楽が耳に届いた。茉優さんが先に入り、わたしと岡本さんは彼女に続いて中に入った。
彼女は岡本さんに声をかけると、カウンターの中に消えて行った。
お店の中は八割方、客が埋まっていた。かなりはやっているといっても過言ではないだろう。彼女はお店の奥から顔を出すと、岡本さんに合図をした。
「こっちに席を取ってあるよ」
彼はわたしを促し、奥の席へと案内した。オープンなカフェだったが、壁や植物などをうまく活用して、随所に個室のような空間を作り出していた。彼は案内した席も、そういう席だった。
わたしが席に座ると、彼は正面に座り、メニューを差し出してくれた。



