舞香はそんな亜津子のやり取りを黙って見ていた。

 わたしは今まで気づかなかったが、彼女たちはいない相手の陰口をこうやって叩いているのだろうか。

 あのときはわたしだけを悪く言っているのかと思っていたけれど。

 そう考えるとわたしだけが悪く言われているというよりもゾッとしてしまった。

 そのとき、琴子が戻ってきた。彼女は席につくと、顔の前で両手を合わせた。

「今日は五時まででお開きにしない? 夜会えないかと言われたの」

 彼女たちと会ったの午前十一時くらいから。それくらいならいいだろう。もともと朝から夜まで一緒にいるのは、近場であうときはほとんどなかった。

 だが、亜津子は不満を露わにしていた。

「本当ごめんね。お詫びに今日はおごるよ」
「いいよ。悪いよ」

 亜津子はどことなく弾んだ声でそう口にした。

「いいの。それくらいはさせてほしいな」

 琴子がそう甘えた声で言ったことで、亜津子は不満めいた表情を少しは和らげた。