「前の彼氏にもかなり貢いでいたよね。今回はどれくらい続くんだか」

 亜津子の言葉を如実に表すかのように、彼女には彼氏があまり途絶えたことがない。今回のように事前の情報提供があればいいが、彼氏と言われても、新しい彼氏なのか、前の彼氏なのか分からなくなるほどだ。

 とりわけ美人というわけでもないとは思う。だが、愛想のよい笑顔に加え、舌ったらずな甘えた口調は異性を魅了するのだろう。わたしも琴子のことは婚約破棄を笑い話にしていたのを聞くまで、愛想のよい可愛い感じの子だと思っていた。

 彼女の前の彼氏は大学生だった。家の近くのコンビニで働いていた学生からナンパされたらしい。ただ、相手の二股が発覚して半年ほどで別れたと聞いた。亜津子が貢いでいたぼやくように、彼女は大学生の彼氏とのデート代を全額もち、頻繁にプレゼントを送っていたらしい。

 今の彼氏は友人の紹介で知り合ったそうで、彼女と歳も近い。

「でも、今回はうまくいくんじゃないかな」

 琴子のことをよく思っていると言ったらウソにはなるが、不幸になってほしいとまでは思わなかった。

「本当、ほのかは甘いよね。琴子はあれでちゃっかりしているから」

 亜津子のにやついた口調に、彼女が何を言いたいのか察してしまった。