辺りには色とりどりの蛍光灯が、月明かりに対抗するかのように辺りを照らし出した。
 息を吐くと、口元が白く濁る。

「ここも毎年、すごいよね」

 仁美は辺りを見渡していた。

 仕事帰りに仁美とイルミネーションを見るために遠出したのだ。誘い合わせて一緒に行くようになったというよりは、仁美に誘われたのだ。彼女はこのイルミネーションを実際に目で見て確認したかったようだ。

 見ると言っても、辺りの観客のようにその美しさをただ鑑賞しにきたわけではない。どうやらこのイルミネーションは仁美の古くからの知り合いがデザインしたもので、それを実際に目で見たかったようだ。

 デザイナーと一言でいってもいろいろな仕事があった。こうしたイルミネーションの様相をデザインする仕事もある。仁美は所長のつてもあってか、その顔は半端なく広かった。

「仁美さん、来てくれたんですか?」

 歓喜に満ちた声に振り返ると、黒のトレンチコートに髪の毛をショートカットにした黒髪の女性がこちらを見つめて立っていたのだ。仁美も長身だが、彼女はそれ以上に長身だ。

「門脇さん、久しぶりです」

 仁美はそう会釈した。そして、彼女はわたしとその門脇という女性を簡単に紹介していた。