彼は仁美の気持ちに気付いていて、彼女が心を打ち解けてくれるのを待っているのだろう。どれくらいかは分からないが、きっと決して短くはない時間を。そこまで誰かに思われている仁美を改めて羨ましいと思った。

 そういえば岡本さんもそうだ。彼も好きな人がいると言っていた。好きな人への想いが実りそうにない時点で、岡本さんのほうが状況は辛いのかもしれない。

「そんなことより旅行だよ。パンフがあるから、後で一緒に見よう」

「分かった」

 わたしは仁美の言葉に頷いた。

 昼食時に仁美と話し合いをし、車で三時間ほどの場所にある温泉街に一泊二日か二泊三日で行くことにした。車は仁美が出して、運転してくれるようだ。一泊にするか、二泊にするかは近くの観光地をどれくらいめぐるかで決めるらしい。

 問題はどこに泊まるかと、人手の多さだ。年末年始はまとまった時間休みになるため、予定が立てやすいが、人手の多さと宿が取れるかどうかが問題となる。

 仁美もその辺りを気にしているようで、短い時間でどうするか決めることにした。年明けで一泊二日でもいいとお互いの意見が一致していた。