「俺にとってほのかさんはそういう相手だったから。今まで接点がなくて、話をしてみたいと思っていた」


 わたしはそんなに大した人間じゃない。きっとわたしのことを過大評価をしているのだろう。そう分かっていても、嫌な気はしなかった。

 そのとき、わたしたちのもとに注文した品が届いた。わたしたちは顔を見合わせるとなんとなしに笑い、それぞれ注文した品を食べ始めた。

 お店を出るともう辺りは人気も少なくなっていた。気温も昼より一層冷え込んでいたが、不思議とそこまで寒さは感じなかった。

「家の近くまで送るよ」

「岡本さんの家はどこなの?」

 彼の教えてくれた家の場所は途中までは一緒だが、その途中から大きく別れる。彼の時間を大きくロスしてしまうことになるし、そんなに遅い時間ではない。

「途中まででいいよ。この時間に一人で帰るのも慣れているもの」

「危ないから、送ります。タクシーでも」

「本当にいいの」

 わたしの言葉に彼は渋々頷いていた。

「岡本さんは優しい人だね。最初は怖い人だと思っていたけど、全然ちがった」

「怖いって」

「だってああいう風に声をかけられたらびっくりする」