「すごくすっきりした顔をしているね」

 仁美はそう言うと、目を細めた。

「そう、かな」

「そう。一瞬だけ、そんな気がした。今は辛いだろうけど、無理はしないでね」

 それは岡本さんのことを考えていたからだろう。

 わたしは頷くと、再び取り組むことにした。

 ただ気合いだけでどうにかなるものではなく、その日は午前中は何も進歩がなかった。そして、午後からは仁美の打ち合わせに同行することになった。歩いていける距離ということもあり、仁美の希望で歩いていくことになった。

 わたしたちは身支度を整え、外に出た。

 自動扉を抜けると、白っぽい寒空が辺りを覆い、それに負けないほどの強い風が辺りに吹きすさぶ。
 
 わたしはマフラーをきゅっとより強くしめた。

 寒さに身を縮めているわたしとは違い、彼女は目を輝かせながら、軽快な足取りで歩を進め、辺りを見渡していた。

「もう紅葉の時期だね」

 仁美は目を輝かせながら、公園を彩る紅葉に視線を向けた。

「そうだよね」

 その彼女の動きがとまり、一か所を指さした。

「あれ」

 彼女が指さした先には子供の姿があった。その子供の手にはバッグが握られていた。恐らく仁美が指さしていたのは、そのデザインだ。それは仁美が一年前にデザインしたキャラクターだったから。