「泣いて楽になるならないていいよ。俺のことは気にしないでいいから。何か言いたいことがあれば聞くから」

 その言葉が引き金となったように、わたしの目から涙があふれてきた。

 わたしは延々と雄太との出会いやちょっとしたやり取り、婚約破棄に至った過程まで彼に語っていた。たどたどしく、文章がつながっていたかもわからなかった。

ただ、彼はそんなわたしの言葉に時折相槌をうちながら、話を聞いてくれた。


 わたしは鏡に自分の姿を映し出した。目が充血していて、肌が部分的に赤くなっているのが気になるが、さっきよりはましになっていた。さっきというのは泣いてしまった後。

泣いてファンデが落ちてしまったため、顔自体を洗うことにしたのだ。洗顔用石鹸があるわけもなく、手洗い用の石鹸で顔を洗った。もともとファンデとチーク、口紅くらいしか使わないのが幸いしたのか、問題ないレベルまで落ちていた。

 わたしは彼から借りたタオルで顔を拭うと、タオルを洗面所の近くに置いた。その足で化粧室のドアを開け、彼のいた部屋へと戻った。