わたしは元婚約者の弟に恋をしました

 わたしは外に出るとため息を吐いた。

「まだ時間があるから大丈夫だよ」

 仁美はわたしの肩をぽんと叩くと、目を細めた。

 あの後、一日中考えてはいたが、全く思い浮かばなかったのだ。

 試行錯誤の上考えた案は、仁美に似ているものがあると却下された。

「仁美はどれくらいで思いつくの?」

「だいたい資料に目を通せば思いつくかな」

 そうさらりといった友人の言葉を聞き、ため息を吐いた。

 彼女が特別すぎるのは分かっているが、自分との差を痛感してなんとも言えない気分になってきていた。
 今週末は幸い予定がない。家でゆっくり考えようと決めた。


 家に帰ると携帯にメールが届いていた。そのメールを開き、ドキッとした。

 差出人は雄太だった。そこには話があるから電話していいかと書かれていた。

 時刻は七時を回っている。いつも通りであれば彼はもう仕事を終えている時間だ。

 わたしは手が震えるのを抑えながら、彼の番号に電話をした。

 すぐに彼の声が聞こえてきた。

「元気だった?」

 他愛ない問いかけに「うん」と返事をして、同じ言葉を問いかける。
 彼もわたしと同じ返事をした。

「明日、話があるんだ。いいかな。できれば直接会って話をしたい」

 本当なら嬉しい誘いのはずなのに、終始暗かった彼の声に、わたしはそっと唇を噛んだ。