「寒かった」

 その声とともに同僚の男性が扉を開けて入ってきた。彼はマフラーを解くと、机の上に置いた。

 もう秋の名残は消え、冬に突入していた。そのため、わたしと仁美は外で昼食を食べることはなくなっていた。当然、岡本さんと顔を合わせる機会もほとんどなかった。


 岡本さんはともかく、雄太とわたしの関係はどうなるのだろう。

 冬の寒さに比例するように、わたしの心もじんわりと冷たくなっていった。

 仁美の視線がわたしの机の上のカレンダーへと移った。

「今年ももう少しかあ。よく働いた」 

 彼女はそうぼやくとわたしを見てにやりと笑うと、耳元で囁いた。

「温泉でも行ってゆっくりしない? もちろん、彼氏との約束が最優先でいいけど」

「いいよ」

 たまに無駄話はするが、これくらいで咎められることはそうそうない。

 仁美はわたしと雄太がうまくいっていると思い込んでいるようで、今みたいにわたしをからかうことも少なくない。ただどちらにせよ、わたしには彼からの連絡を待つしかなかった。