わたしの目の前に印刷された二枚の紙が表示された。彼女がデザインを任された新ブランドのイメージキャラクターだ。それを小物などのグッズにも活用する予定らしい。

「これってどっちがいいと思う?」

「わたしはこっちかな」

 わたしは飴色で毛並みをかかれたイラストのほうを指さす。

 猫のキャラクターで、できるだけ簡素で、愛らしく、柔らかい雰囲気を醸しだすものをというものが先方のリクエストだ。

彼女はデザインもだが、いくつか案をあげ、塗りのパターンを変えたり、色遣いを変えたりとアレンジを加え、それが最終的に三つに絞り込まれていた。

「わたしもこれが一番のお気に入りなんだ。やっぱり浦川さんとは気が合うね」

 彼女は目を細めた。

 彼女は普段はわたしをほのかと呼ぶが、仕事中は苗字で呼んでいた。そのため、わたしも彼女のことは苗字で呼ぶようにしていた。

 あの婚約破棄から三週間が経過していた。その間、雄太から一度も連絡はない。