彼に関することだと、もう一つ気がかりなことがあった。亜津子は彼に興味を持ったようで、彼のことをどんな関係なのか、彼の名前などを聞いてきたのだ。

高校の後輩と言うのはなぜか阻まれ、仕事で顔を合わせたことがあるだけで詳しくは知らないと流していた。亜津子は分かったら教えてといい、それ以上は聞いてこなかった。わたしから情報を聞くチャンスを伺っているのかもしれない。

 他の二人には話をしていないのか、他の二人がとりわけ興味がないのか、そうしたことを言ってくる気配はなかった。


 お弁当を開け、食べ始めたとき、仁美がわたしの肩を叩いた。

 彼女はきらきらと目を輝かせ、公園の奥のほうを見つめていた。

「あの子、すっごい美形じゃない?」

 わたしはなにげなく、仁美の視線の先に目を向けた。

 だが、その先にいた人を視界に映し出したとき、わたしは思わず目を見張った。そこにいたのは、彼女が美形と称したのが分からないでもない、スーツを着た綺麗な男の人だ。もっともわたしも初対面のとき、彼を綺麗な人だと評していたのだ。