わたしはあくびをかみ殺すと、肩を落とした。

「どうしたの?」

 からかうような口調とともに、わたしの机に影がかかる。顔をあげると、仁美が苦笑いを浮かべて立っていた。

「昼休みだからと気を抜きすぎ」

「いいじゃない。休みくらい。昼はどこで食べる?」

「今日は天気もいいし、外で食べようか」

 仁美の一声で今日の昼食を食べる場所が決まった。

わたしはデザイン事務所で働いている。社員は社長やわたしと仁美を含め十人といったところだ。もともとわたしは大学では英文学科に進んでいたが、就職時に一発奮起し、この会社に就職できたのだ。もともと絵を描くのは好きで、アナログもデジタルもよく描いていたたし、ポートフォリオの作成にはさほど困らなかった。

 わたしたちは他の同僚に声をかけると、オフィスを後にした。

 わたしの働いている事務所は高橋デザイン事務所という事務所だ。仁美のおじさんが社長をしている事務所で、女性はわたしと仁美、そして丘野さんという五十代の人の三人のみだ。仁美はわたしより二歳年上で、一番年の近い同僚でもある。