暖かい春の日差しが窓辺から差し込んでいた。

 わたしはケーキを頬張ると、目を細めた。

「おいしい」

「最近、太ったんじゃない?」

 仁美はフォークを片手に、そうからかった。彼女の左手には指輪が煌めいていた。それをもらったのは今年に入ってから。付き合ってから結婚というのがセオリーだと思うが、もうプロポーズをされたらしい。それを彼女は即答で受け入れ、二人は婚約していた。

「気にしているのに」

 わたしが頬を膨らませると、仁美は笑っていた。

 それからの彼女は例外なく幸せそうだ。

「でも、幸せそうでよかった」

「本当に毎週よく来ますね」

 呆れ顔を浮かべた茉優さんがわたしたちの席にやってきた。

 彼女は無事にこの春、大学院への進学を果たしていた。それから週末だけ手伝いをしているようだ。

 わたしと仁美はここ数か月、休みの日は頻繁に通うようになり、常連になりつつあった。

「だって本当においしいんだもの」

 そう満足そうに言う仁美に、茉優さんは困ったような笑みを浮かべていた。