わたしは手の甲に息を吹きかけた。白い煙の塊が一瞬だけ冷えた肌を癒してくれるが、すぐに冷たい空気に包まれた。

 あれからわたしは聖にメールを送った。会って話をしたいことがある、と。そのまま流されればそれが現実だと受け入れようと自分に言い聞かせていた。だが、彼からすぐに返事が届き、翌日の日曜日にこうして待ち合わせることになったのだ。どうやら昼過ぎには出張から帰ってこられるらしい。

 わたしが待ち合わせ場所に指定したのは彼と初めて会った高校の近くにある公園だ。
 何年ぶりだろう。それほどわたしはこの場所に来ていなかった。

 彼がこの場所を指定されてどう思ったのかは分からない。

 こんな寒い中待ち合わせをするのかはどうかと思ったが、逆に人に聞かれずに話をできるチャンスでもあった。

 約束の十五分前だ。まだ聖は来ていないだろう。

 そう思い、公園の中に入った時、黒いコートを来た長身の男性の姿があった。

 彼はわたしと目が合うと優しく微笑んだ。彼氏でいてくれたころと同じ瞳で。

 わたしの中で何かが溢れてくるのがわかった。

「久しぶりだね」

 その気持ちを押さえつけるように、ゆっくりと言葉を発した。