わたしは元婚約者の弟に恋をしました

「込み入った話になるので、わたしの家にきませんか?」

 わたしはその提案に躊躇した。なぜなら、聖の家が近くにあるからだ。

「聖は出張だから、家にはいませんよ」

 それを聞き、わたしは彼女の提案を受け入れることにした。

「行きましょうか」

 歩きかけた彼女を呼び止めた。

「もう帰っていいの? 買い物があるなら付き合うよ」

「もともと用事なんてありませんでしたから。あえていうなら、友達のお姉さんと待ち合わせをしていたんですけどね」

 わたしは思わず彼女を見た。それは舞香のことを指している気がしてならなかったのだ。

「察しの通りです。でも、あなたに直接話をしておいたほうがいいと言われて、ここにきました。なので行きましょう」

 わたしたちはそこから歩いて茉優さんの家に向かうことになった。