香ばしい薫りが鼻先をついた。

 わたしはコーヒーを飲むと、亜津子の独弁を話半分で聞いていた。

 どうやら彼女には念願の彼氏ができたようで、その彼氏の自慢をしたいらしい。琴子は夏前から付き合い始めた別の彼氏と別れたようで、どこかふてくされた表情でその話を聞いていた。

 舞香はいつも通り淡々とした表情で話を聞いていた。

「琴子にも彼氏ができるよ。舞香は全く男っ気ないよね。ほのかもそろそろ付き合ってもいいんじゃない?」

「わたしはいいかな」

 わたしは亜津子の言葉に苦笑いを浮かべた。

 雄太と別れたばかりのころに聖と付き合い始め、雄太と別れたあと、わたしはどんな心境になっていたかはわからない。だが、新しい恋をする気にはどうしてもなれなかった。

「そんなこといっていると行き遅れちゃうよ」

 亜津子はそうわたしの肩を叩いた。

「わたし、来年の春に結婚することにしたから、この中では一番乗りかな」

 舞香は大げさに肩をすくめた。

 その言葉に亜津子も琴子も顔を引きつらせた。

「いつ? 誰と?」

「同じ会社の人。付き合って三年だし、そろそろかな、と」

「どうしていってくれなかったの?」

「聞かれなかったから」