わたしの目の前に映画のチケットが二枚手渡された。

 仁美はにっと明るい笑みを浮かべた。

「これ、二人で行ってきたら?」

 わたしは虚をつかれ、それを受け取った。

 雄太から別れるように促されて一週間が過ぎた。

 その間、聖に会うことは一度もなかった。

 彼から誘われることはあったが、彼に会うことで別れを提示しなければいけないという義務感にとらわれ、彼の誘いを断っていた。

「行かないと思う」

「映画嫌いだっけ?」

「嫌いじゃないけど、ちょっとね」

 仁美はそれをわたしに押し付けた。

「行かなかったら誰かにあげてもいいよ。無理強いはしないから。喧嘩したなら仲直りしたほうが良いよ」

 わたしはそれ以上何も言えずにそれを受け取った。

 喧嘩だったらどれほどよかっただろう。

 わたしの携帯にメールが届いた。差出人は聖だ。今週末か来週末、一緒に出掛けないかというものだった。わたしは往きたいと思う気持ちを抑え、仕事が忙しいからと返信していた。