わたしは新しい春色のワンピースを着た自分の姿を鏡に映し出していた。仁美はそんなわたしを見て、満足そうに微笑んでいた。

「よく似合うよ。きっと岡本さんも可愛いと言ってくれるよ」

「ありがとう」

 わたしと仁美は身支度を整えていると、仁美の部屋がノックされる。

 仁美が返事をすると、髪の毛を一つに結った女性が顔を覗かせた。

「陸人君が来たわ」

「分かった。今から行くよ」

 彼女はわたしに会釈をすると、仁美の部屋を出て行った。

 わたしも彼女と一緒に出掛ける予定だ。といっても、わたしと仁美、松永さんの三人で出かけるわけではない。もちろん、聖も一緒だ。

 昨日、仁美の家に泊まることにしたため、松永さんがわたしたちを迎えに来てくれると言ったのだ。

 玄関には松永さんの姿がある。スーツ姿も様になっていたが、そのスタイルと顔の良さは無地の白いシャツと黒のパンツというシンプルな格好もよく似合っていた。

「行こうか」

 松永さんはそういうと、家を出て行った。

 わたしたちも彼の後に続き、家の前に停めてあった彼が乗ってきたと思しき、黒い車に乗り込んだ。