彼はまっすぐな瞳でわたしをとらえた。わたしは彼を見つめ返すことしかできなかった。

 彼がゆっくりとわたしに近寄ってきて会釈した。

「よければ俺と付き合ってほしい」

 今すぐでも付き合うと言いそうになる気持ちを必死に抑え込んだ。

「でも、わたしはまだ岡本さんのことをそんなに知らない」

「焦りすぎなのは分かっているけど、今のままだともうほのかさんに会えなくなってしまう気がした。だから、俺の気持ちを伝えておきたかったんだ」

 わたしがここ最近考えていたことを見透かされたような気がした。

 一緒にいたいかそうでないかと己に問いかければ、答えはすぐに出てきた。一緒にいたいに決まっていた。それにノーを突きつけることも。だが、彼のまっすぐな言葉が、わたしの心にすっと入り込んできて、わたしの凝り固まった心を溶かしていってしまった。

「わたしもあなたが好き」

 最低なことをしていると分かっている。雄太とのように、二人の今後に結婚という未来を描いてはいけないことも。いずれ別れないといけないことさえも。それでもわたしは首を縦に振っていた。