わたしは元婚約者の弟に恋をしました

「ありがとう」

 彼女なりにわたしを気遣ってくれたのだろう。彼女の言葉は温かいものだった。ただ、この答えは自分で出さないといけない。万が一のとき、彼女に苦しみを与えてはいけない。

 そして、それは岡本さんにも言える。彼はわたしを思ってくれたとしても、自分の兄と付き合っていたなんて知りたくもないだろう。このままわたしが彼のことをなんとも思っていないで通せば、誰もこれ以上苦しい思いをしなくていい。

 わたしは仁美と別れ、家に帰ることにした。

 だが、どうにも足が進まない。

 家に帰って岡本さんに返事をしようと決めたからだろうか。

 わたしは道の端によると、岡本さんに返事をすることにした。

 その日は用事があるので、会えない、と。

 それからしばらくして、彼から分かったとの返信が届いた。