わたしは元婚約者の弟に恋をしました

「そっか。うまく返答できないけど、幸せになれるといいね。みんな」

「はい。わたしもそう思います」

 茉優さんはそう微笑んだ。

 わたしたちはケーキを食べ終わると店を後にした。茉優さんはお母さんが戻ってくるのを待ち、一緒に帰宅するらしく、お店で別れることにした。

 もうすっかりと辺りが暗くなっていて、先ほどよりも街灯が存在感を増していた。

 仁美は天を仰いだ。

「茉優さんっていい子だね」

「そう思うよ」

 仁美の言葉に頷いた。

「わたしももう少しまじめに考えてみようかな。怖がるだけじゃ何も変わらないもんね」

 彼女の目には松永さんの存在が映っていたのだろう。きっと茉優さんと同じように自分を思い続けてくれた。

 わたしは彼女がどんな決意をしたのかは聞かずに、そうだねと頷いていた。