わたしは携帯を見るとため息を吐いた。彼とあのような形で別れて三日が経過していた。

彼とはこんなことになるまでは毎日のように電話やメールをしていたが、あれ以降は彼からの連絡は一切届かなかった。彼も仕事が忙しいのは分かっていた。だが、このままだと生殺し状態だ。彼に彼女とは話がついた。プロポーズは断ったという言葉を言ってほしかったのだ。

 今週末の土曜日は友人と約束をしているため、会うのは早くて日曜、それが難しいなら来週以降になる。日曜日は彼と過ごすことが多かったため、予定をほとんど入れていなかったのだ。ただ、彼の両親は次の日曜は都合が悪いという類のことを言っていた。今週末に会うのは難しいだろう。彼もそれを知っていたため、どこかでもう少し猶予があると考えていたのかもしれない。

 彼を思えば連絡すると言った言葉を信じ、待つべきなのかもしれないという気持ちはあった。ただ、時間とともに不安な気持ちが増していくのと、今週末に会う友人との約束がわたしをかりたてた。彼女たちは高校時代から親しくしている親友のような存在だ。彼女たちには雄太の家にあいさつをしに行くことも言っていた。みんなはっきりとしているため、容赦なくわたしと雄太のことを聞いてくるだろう。

顔色を窺い、雄太の話題を避けようとする両親とは違い、少々手厳し面もある。そうした手前、今週末までには次の予定を立てておきたかったという気持ちがゼロでなかったといえば嘘になる。

 わたしは彼と過ごした一年の思い出に元気づけられ、彼に電話をした。

 呼び出し音が三回鳴った頃、彼の声が電話口から聞こえたのだ。

 けれどその声はいつもの爽やかな声とは違い、どこか憂いを含んだものだった。

 わたしは嫌な予感をひしひしと感じながら、その声を打ち消すために、あえて元気に振舞った。

「今度の日曜はどうかな。その日なら予定も開いているよ」

「その話だけど、もう少し待ってほしいんだ」

 はっきりしない言葉に嫌な予感がした。