わたしは元婚約者の弟に恋をしました

 彼女はそんな調子であっという間に食べきってしまった。

「気に入ってもらえたのならよかった。他にもどう?」

 茉優さんのお母さんはそう優しく微笑んだ。

「せっかくだからいただきます」

 仁美は二つ目のケーキを食べ終わった後、携帯が音楽を奏でた。

 茉優さんのお母さんは携帯を取りだすと、何か会話をしていた。彼女は電話を切ると、わたしたちのテーブルまでやってきた。

「主人が書類を忘れたらしいの。今から届けてくるから、少し出てくるわね」

 茉優さんはお母さんに呼ばれ、何か話をしていた。どうやらケーキの説明を受けているようだ。
 茉優さんはお母さんを見送ると、わたしたちのテーブルまで戻ってきた。

「慌ただしくしてすみません」
「いいの。こちらこそ気を使わせてしまってごめんね」
「いいんです。わたしがお呼びしたので。本当に今日はありがとうございました」

 彼女は礼儀正しく頭を下げた。