わたしは元婚約者の弟に恋をしました

「いえ。高橋さんはとても忙しい人ですよね。よかったらいつでも来てください」

「ありがとう。次の日曜日辺りはどうかな?」

 仁美がわたしに目くばせする。わたしを庇いながらも、自分の目的を果たそうとしたのだろう。

 ここまで来て、わたしが拒否するのもどかと思った。

 なぜ彼はこんなわたしを好きだと言ってくれたのだろう。

「いいよ」

「今からお時間ありますか? 今日、お母さんがケーキを作ってくれたんです。たまに時間があるときは作ってくれて。今からお店に行こうと思っていたんです」

 彼女は微笑んだ。

「いいの? なら、行かせてもらおうかな。ほのかも行くよね」

 わたしは答えに詰まる。ケーキを食べたいのはあるが、誰が来ているのか分からないためだ。

「本当は聖と池田さんもよんでいたんですが、急に出張になったらしくて。わたしとお母さんだけしかお店にいませんよ」

 わたしの気持ちを汲み取ったかのように、茉優さんが言葉を綴った。

「行こうよ。ね?」

 仁美の誘いに乗る形となり、わたしは首を縦に振った。