「この前は聖のこと、ありがとうございました」
「わたしより池田さんのほうがいろいろとしてくれたから。わたしは体調が悪い時に呼び出してしまっただけで」
彼女はそっと唇を噛んだ。
「きっとあなたが帰るように進言してくださったんでしょう。それに池田さんにはもうお礼を言っていますので」
池田さんも茉優さんに連絡を取れる手段を持っているようだ。きっと茉優さんがそうであってもおかしくはない。だが、それ以上に、その大人びた言葉に、わたしは胸を痛めた。彼女の言葉は彼を本気で思っているが故の言葉だと思ったためだ。それにわたしは仁美を連れてくると言いつつ、彼女が茉優さんのお店に行くのを妨害しようとしていた。彼から告白されて気まずいという理由だけで。
わたしは彼女にどう返事をしていいかわからなかった。その結果としてわたしたちの会話の後にはずっしりとした沈黙が生じた。何か言葉を発そうとしても、わたしの言葉は沈黙にもみ消された。だが、延々に続くのではないかと思われた沈黙は明るい声によってかき消された。
「二人でいつか店に行きたいと話をしていたの。ただ、仕事が忙しくてなかなか行けなくてごめんね」
そう言ったのは仁美だ。彼女は顔の前で手を合わせて、ごめんねのポーズをする。
心なしか暗かった茉優さんの表情が明るくなった。
「わたしより池田さんのほうがいろいろとしてくれたから。わたしは体調が悪い時に呼び出してしまっただけで」
彼女はそっと唇を噛んだ。
「きっとあなたが帰るように進言してくださったんでしょう。それに池田さんにはもうお礼を言っていますので」
池田さんも茉優さんに連絡を取れる手段を持っているようだ。きっと茉優さんがそうであってもおかしくはない。だが、それ以上に、その大人びた言葉に、わたしは胸を痛めた。彼女の言葉は彼を本気で思っているが故の言葉だと思ったためだ。それにわたしは仁美を連れてくると言いつつ、彼女が茉優さんのお店に行くのを妨害しようとしていた。彼から告白されて気まずいという理由だけで。
わたしは彼女にどう返事をしていいかわからなかった。その結果としてわたしたちの会話の後にはずっしりとした沈黙が生じた。何か言葉を発そうとしても、わたしの言葉は沈黙にもみ消された。だが、延々に続くのではないかと思われた沈黙は明るい声によってかき消された。
「二人でいつか店に行きたいと話をしていたの。ただ、仕事が忙しくてなかなか行けなくてごめんね」
そう言ったのは仁美だ。彼女は顔の前で手を合わせて、ごめんねのポーズをする。
心なしか暗かった茉優さんの表情が明るくなった。



