わたしは元婚約者の弟に恋をしました

「聖なら大丈夫だよ。茉優ちゃんはあの家のことを誰よりもよく知っているから」

 わたしを安心させようとしたはずの言葉のはずなのに、わたしの心が痛んだ。

「二人は小さいときから一緒なんですか?」

「そのはずだよ。僕が聖に会ったのは、彼が小学生の時だけど、その時からすでに茉優ちゃんはよく出入りしていたな。だから最初は兄妹なのかと思っていた。今でも本当に仲がいいね。彼女が一緒にいてくれて助かっているよ。僕もできるだけ面倒をみたいけど、仕事もあるしなかなかそうはできなくてね。岡本さんたちも忙しい人だったから、いい遊び相手にもなってくれたんじゃないかな。リビングに写真があったのは見た?」

 わたしは首を縦に振った。

「あれは唯一行った家族旅行だと聞いたことがあるよ」

 家族旅行という言葉にドキッとした。

 そこに雄太がついていったのだろうか。これだけ親しい茉優さんがいないにも関わらず。だが、歳の差がある二人のどこに接点があったというのだろう。

 それにどんなに忙しくても一度だけしか旅行にいけないなんてあるのだろうか。