わたしは元婚約者の弟に恋をしました

 家族写真になぜ雄太の姿が混じっているのだろう。わたしは写真たてをそのまま戻すと動き出したヒーターの傍に戻る。

 わたしの心臓は高鳴り、寒さは先ほどよりも感じなくなっていた。

 そのとき、池田さんが顔を覗かせた。

「じゃあ、帰ろうか」

「岡本さんは?」

「茉優ちゃんに電話をしておいたから大丈夫だよ。今からすぐにくる、と」

「そうですね」

 彼のことが好きだから心配なのだろう。わたしも彼のことが心配だ。だが、きっとわたしはここにいていい間柄じゃない。

 玄関が開き、茉優さんが入ってきた。

「聖は?」

「もう寝ているよ。何かあったらよろしく頼むよ。聖には茉優ちゃんが来ると言ってあるから」

「分かりました。もう大丈夫ですよ」

 彼女は不安げな笑みを浮かべた。

 わたしは池田さんに促されて、家を出た。雪はさっきより積もっていた。茉優さんなら知っているのだろうか。

 なぜ雄太があそこに写っていたのか、を。

 わたしたちは家の前に止めていた車に乗り込んだ。