岡本さんの祖父母が経営していたカフェがあり、そのお店を茉優さんという女の子のお母さんが引き継いでいること、そこのスイーツがおいしいことを伝えた。あと、茉優さんが仁美のデザインを好きだということも。それを聞き、仁美は茉優さんが迷惑でなければ会ってみたいと言っていたのだ。あの彼女の様子から仁美を迷惑がることもないだろう。

「まだ気にしている? 館川さんのこと」

 わたしは思いがけない名前に、思わず仁美を見た。

「違うの? 思い出させてごめんね」

「うんん。気にしないで」

 婚約破棄されて、ずっと悩んでいたら、やはりそう考えてしまうのだろう。わたしは岡本さんとのことを考えていたのだ。

 職場が同じだったりと何らかの接点があればいいが、わたしと彼には高校が同じという以外に接点はない。そのため、どちらかが会おうと言い出さないと、何らかの偶然が起きなければ彼と会うこともできないのだ。

 だが、彼を誘うというのは勇気がいった。