見慣れた家の前に来ると、深いため息をついた。
わたしが家を出てから一時間あまりが経過していた。買い物に行くならいざ知らず、婚約者として両親に紹介した相手の親に会いに行き、帰ってくるには少々無理のある時間には違いない。
別の場所で途中下車をすることも考えたが、あの見知らぬ人に腕を掴まれたため、住み慣れた駅に降りることになったのだ。
こんな時間に帰ってくる羽目になったのは、間違いなくあいつのせいだ。
名前も知らない男性を恨めしく思いながら、家の玄関を開けた。
出来るだけ音を殺していたのにも関わらず、テレビの音声と共にリビングの扉があく。
髪の毛を後方で一つに結った黒髪の女性が顔を覗かせた。彼女は興味深そうにわたしの全身をまじまじと見る。
「早かったわね」
その言葉は暗に彼の家に行ったときの事後報告を求めているような気がした。
実家住まいで母親が専業主婦であるため、一切の家事は免責されていて便利だと思う。だが、今日ほど実家暮らしの苦痛を感じたことはなかった。
わたしが家を出てから一時間あまりが経過していた。買い物に行くならいざ知らず、婚約者として両親に紹介した相手の親に会いに行き、帰ってくるには少々無理のある時間には違いない。
別の場所で途中下車をすることも考えたが、あの見知らぬ人に腕を掴まれたため、住み慣れた駅に降りることになったのだ。
こんな時間に帰ってくる羽目になったのは、間違いなくあいつのせいだ。
名前も知らない男性を恨めしく思いながら、家の玄関を開けた。
出来るだけ音を殺していたのにも関わらず、テレビの音声と共にリビングの扉があく。
髪の毛を後方で一つに結った黒髪の女性が顔を覗かせた。彼女は興味深そうにわたしの全身をまじまじと見る。
「早かったわね」
その言葉は暗に彼の家に行ったときの事後報告を求めているような気がした。
実家住まいで母親が専業主婦であるため、一切の家事は免責されていて便利だと思う。だが、今日ほど実家暮らしの苦痛を感じたことはなかった。



