「わたしと岡本さんはそういう関係じゃないから、大丈夫だよ」

 わたしは彼女をなだめる意味を込めて、そう言った。

 彼のことを全くいいなと思っていなかったら嘘になる。だが、婚約者を失ってひと月足らずで、誰かを好きになるなんて切り替えが早い人間じゃない。

 茉優さんは驚いたようにわたしを見た。そして、岡本さんに視線を送った。

 岡本さんは心なしか、悲しそうに笑っていたように見えた。


 そこから少しして茉優さんは仕事に戻った。わたしは岡本さんと他愛ない話をして、昼過ぎにはお店を出ることにした。

 今からどこかに出かけるという選択肢が頭を過ぎらなかったといえば嘘にはなるが、彼はわたしを誘うことなく、家の近くまで送ってくれると言ってくれた。そのため、わたしは家の近くにある大き目のスーパーを告げ、彼をそこまで送ってもらうことにした。

「今日はありがとう」

 わたしは車を降りる前に、岡本さんに頭を下げた。