「喜ぶなんて。彼女を好きな人なんていくらでもいるし、わたしなんて」

「仁美は街中で自分のデザインしたものを持っている人を見たらすごく嬉しそうにしているんだもの。感想なども聞きたいみたい。こっそりと買ったりもするくらいだしね」

「意外。その他大勢のうちの一人にしか見ていないと思っていた」

「仁美はそういう人なの」

「そうなんだ」

 彼女は嬉しそうに笑っていた。

 本当は仁美に会わせると言えればかっこいいのだけど、そういうのは仁美の都合もあるし言えなかった。もっとも仁美なら喜んで会ってくれそうだけど。

「だからってあなたを認めたわけじゃないから」

「それはそうだと思うよ」

 好きな人に近寄ろうとするわたしが嫌なのだろう。もっともわたしに敵対心を持つよりは、彼の忘れられない人のほうが彼女にとっての敵のような気がするけれど。彼女は思い人のことを知らないのだろうか。

「今のあなたに聖はあげない」

「茉優」

 わたしの抱く疑問が確信に変わった。本当に、彼のことが好きなんだろう。