わたしは元婚約者の弟に恋をしました

 花の模様のついた可愛い携帯のケース。それは仁美がデザインしたものだったからだ。もっとも仁美の名前を積極的には出してはいない商品だ。

「何よ」

 彼女は自分の携帯ケースを手で覆うとわたしを睨んだ。

「それ、可愛いね」

 隠さなければいけないというわけではない。けれど、言うのはなぜか憚れてしまった。

「当り前よ」

 そのやり取りを見て、岡本さんが噴き出していた。

「茉優、それを高橋さんがデザインしたものって知っているんだよ」

 わたしも彼女も同時に驚いていたと思う。彼女は岡本さんの話を聞き、目を見張った。

「まさか、この人も高橋さんのファンなの?」

「ファンというか、友達というか、同僚というか」

 どう説明していいかわからず、わたしと仁美の関係を羅列した。

「同僚って、この人が?」

 彼女はわたしの顔をじっと見た。

「立場は高橋さんのほうが上だけどね。同じ事務所で働いているの」

「信じられない」

 彼女の頬が若干赤く染まった。