ああ、誰も愛せなくなってる。

いつからこんなふうに
なってしまったのだろう。

昔は純愛だった。

8年もの間 好きだった男の子。


「出席とりまーす。みんな
大きな声でお返事してくださいねー!」

ドキドキの一年生。
担任の先生は女の人で
たぶん50歳はいってたと思う。

幼稚園は若い先生ばっかりだったから
小学校の先生は随分とおばあちゃん先生に見えた。


男女ペアで並べられた机。

「野崎ダイチくん」

「はーい」

私の隣の男の子は「野崎ダイチ」って
言うのか。

「西寺ヒナ」

「はぁい」

小さな声で返事をした。

「お前声ちっせぇな」

不意に話しかけられ
焦る私。

「なっ、そんなことないもん。あ!」

手の甲にマジックペンで線を引かれた。

「やめてって。よごれるやん」

ヒナの嫌がる顔が面白かったのか
彼はマジックペンで迫ってくる。

「もう!」っと手を振り払うのと同時に
ヒナの服に黒いインクがついてしまった。

「ぅう…」

大泣きはしなかったものの
異変に気づいた先生は
「どうしたの!?」とヒナの所へ来た。


「この子が…やったの…私の服にマジックペンで落書きしたの!」

「野沢くんに?」

「うん」

「野崎くん、ゴメンナサイは?」

「俺は悪くねぇもん!コイツが
バタバタ動くから…」

出会は最悪だった。

「よくも先生にチクリあがったな!」

そんな野蛮なセリフを毎日のように
言われて、ヒナはどんどん
学校に行くのを嫌いになった。