「ふぅーっ!やっと片付いたな!」


遊馬が、事務所のソファにダイブしながら
口を開いた。

遥が帰ってきてから一週間後。

周くんと遊馬と一緒に事務所の掃除を始めた私は、手伝いに来た雅に声をかけた。


「ありがとう、雅。

手伝ってくれたお陰で、早く終わったよ!」


すると、雅は、ふぃ、と視線を逸らして
私に答えた。


「別に、暇だったから。

…っていうか、遥も呼べば良かったのに。」


ぴくん。


その言葉に、私は反応した。

周くんがすかさず言う。


「九条はいつでも詠ちゃんといれるんだからここには呼ばなくてもいいんだよ。

…それに、受験生を掃除に駆り出すわけにはいかないだろ?」


本音が飛び出た周くんの言葉に少しドキドキしながら、私はふと考え込んだ。


…そういえば、遥は受験生なんだよね。

いろいろ忙しかったから、すっかり忘れてたけど……。


その時、遊馬がさらり、と言った。


「でも、九条って授業料免除の特待生だろ?

受験ぐらい余裕で受かるんじゃね?」


…!


その言葉に、私は目を見開いた。


は………

遥って、そんなに頭良かったの?!

あ、貧乏だから、授業料免除のために特待生になったのかな?


…それにしても、すごい……。


私以外その事実を知っていたようで、周くんも頷きながら言った。


「九条って、弱点とかないのかな。

……なんでもさらっ、とやってのけるから、ちょっと憧れるよね。」