私は、周くんに尋ねようと、ぱっ、と振り返ろうとする。
すると、周くんの大きな声が聞こえた。
「振り返っちゃ、ダメだ!」
!
ぴくん!として、私は動きを止める。
周くんは、小さく、震える声で私に言った。
「……今だけ、僕は引き止めないから。」
……!
私は、黙ったままその場に立っていた。
そして、小さく呼吸をして口を開く。
「…ありがとう、周くん。
気持ちを伝えてくれて、嬉しかった…!」
周くんが、小さく息をするのが聞こえた。
私は、周くんを振り返らずに足を踏み出す。
……周くん。
いっぱい、助けてもらったね。
あなたの優しさに、私は何度も支えられてきた。
周くんの笑顔があったから、私は今まで諦めずに事務所で働き続けられたんだよ。
……本当に、ありがとう。
私は、心の中でそう呟くと、地上へと続く石階段を駆け下りた。
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《周side》
詠ちゃんの後ろ姿が、遠く階段の向こうに消えていった。
……はぁ。
僕は、小さく息を吐く。
……良かったんだよな…これで…。
すると、木の陰から茶髪の青年が顔を出した。
「…“今だけ、引き止めない”…か。
…どこまでも優しいよな、周は。」
現れた相楽くんの言葉に、僕は小さく目を細める。
「相楽くんも、ありがとう。
……見届けてくれて。」
相楽くんは、僕の言葉に苦笑しながら言った
「そりゃ、周と詠のことはずっと見守ってきたからな。
……まぁ、今日の俺は“慰め役”だから。」



