百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



とくん。


胸が鳴った。


…なぜだかわからないけど…

その笑顔は、いつもと同じようでどこか違うように見えた。


「…今、誰かと話してた……?」


私が尋ねると、周くんは小さく目を見開いて、何も答えずに微笑んだ。


……周くん……?


私が立ち止まったままでいると、周くんはゆっくり私に近づいて口を開く。


「………あの日の返事…。

今なら、聞かせてもらえるかな…?」





どきん。


胸が大きく鳴った。


………周くんは、ずっと私のことを考えて待っていてくれたんだ。

……私の気持ちの整理がつくまで。


周くんは、私をまっすぐ見つめている。

その視線は、どこか覚悟を決めたような色を宿していた。


………ちゃんと…伝えなきゃ…。


私は、ぐっ、と手を握りしめた。

そして、周くんから目を逸らさずに答える。


「……私…ずっと、周くんが好きだった。」


周くんは、黙って私の言葉を聞いている。


「周くんは、いつも私の側にいてくれて、私を守ってくれて、優しく慰めてくれて…

本当に、王子様みたいだった。」


今でも、すごく尊敬してる。

好きだった気持ちは、嘘じゃない。


………でも


いつの間にか、心の中に“アイツ”が入り込んでいた。

自分でも気づかないうちに、その存在は大きくなっていて

もう、自覚せざるをえない。


「…あのね、周くん……!私ね………!」


私が言いかけた

その時だった。


「…わかってるよ。」


「………え……?」


周くんが、私の言葉を遮って言った。


……周……くん……?