……そ……

そんな…………


私は、遊馬に向かって叫んだ。


「ねぇ、遊馬!事務所に鬼火銃は残ってないの?」


遊馬は、顔を伏せて口を開く。


「佐伯に渡したのが、最後の鬼火銃だったんだ。

…もう、社長もこの世界にはいない。鬼火銃は、この世に無いんだよ。」


……!


私は言葉が出なかった。


……本当に………

本当に、もう、何も出来ないの………?


遥を連れ戻す方法は無いの…?


………嫌だ…

やだよ……!


「………は…る……」


私が小さく呟いた時

周くんが私を抱き寄せた。

ぎゅっ!と強く、強く抱きしめられる。

その瞬間

私は、ぽろっ、と涙が溢れた。

後から、後から頬を伝って、周くんの肩を濡らしていく。

呼吸が乱れ、体の力が抜ける。

周くんが、腕に力を込めながら、掠れた声で私に言った。


「…九条を連れてこれなくて………

ごめんね…………詠ちゃん………。」


…!


周くんの声は、ただ、ただ優しかった。

私を包み込むようなその声に、抑えていた感情が溢れ出た。


……周くんは、悪く無いのに

いつも、いつも

周くんは優しい


……いつでも、私の側にいてくれる。


私は、トッ、と周くんに体を預け、声が枯れるまで泣き続けた。

夜の静寂が辺りを包み、月の淡い光が私たちを照らしていた。