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“…ちゃん………詠ちゃん”


…遠くで、私を呼ぶ声がする。

目の前が、真っ暗だ。

だけど、光を見たくない。


目を覚ましたら………

きっと………

きっと…………………


「詠ちゃん!」


はっ!として、目を見開いた。

目の前の周くんの瞳と目が合う。




……ここは………


横たわっていた体を起こし辺りを見回すと、そこは、竜ノ神を浄化した神社だった。

もう、金色の光は見えない。

ゆっくり瞬きをすると、遊馬と雅が心配そうに私を覗き込んでいた


「…佐伯、大丈夫か……?」


遊馬の声に、無言でぎこちなく頷く。

ほっとした表情を浮かべる周くんたち。

私は、そこで、はっ!とする。

私が探すのは、この場にいない“青年”の姿。

私は、周くんたちを見上げながらぽつり、と呟いた。


「…ねぇ……遥は………?

遥は………どこにいるの……?」


「!」


周くんたちが目を見開いた。

そして、誰も口を開こうとしない。


…どくん。


その時、私は改めて実感した。


“ここに、遥はいない”


“この世界に、二度と戻ってはこない”