百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



びくっ!と体が震える。

周くんたちも、目を見開いて遥を見た。


…遥が、初めて声を荒げた。

聞いたこともない大きな声。


私が動揺して遥を見上げていると、遥は、小さく呼吸をした。

そして、真剣な表情のまま私に言う。


「俺は、後悔なんかしてない。

詠の代わりに“犠牲”になったとも、思ってない。」





私が、はっ!とした瞬間

ぐにゃり、と世界が歪み出した。


…?!


な……

何が起こっているの………?!


その時、頭上を見上げた芝狸が、大声で私たちに向かって叫ぶ。


『紺の浄化の力で、妖界の時空が歪み始めておる…!

今、元の世界に帰らなければ、お前たちもここから出られなくなるぞ…!』


っ!


“今”………

“元の世界に帰る”………?!


私は、ぐっ、と足に力を入れて立ち上がった

足元の雲の地面が、だんだんと薄くなっているような気がする。

やがて、空を覆っていた紫や藍色の空気が轟々と渦を巻き始めた。

まるで、“異物”を排除するように、私たちを誘っている。

その時

遥が私の体をトンッ!と押した。


「ほら、行け。詠。」


……!