「佐伯!!」


「!」


アパートの階段を遊馬と雅が駆け上がってきた。


紺は、私の腕を掴んだまま二人を見る。


……来て…くれた………!


「紺……!詠を離せ…!」


雅が、聞いたこともないような低い声でそう言った。

紺は、動揺することもなく静かに答える。


「裏切り者の君の話は聞きませんよ。

……芝に伝言でもしてもらおうか。

“そちらの加護者はもらって行く”、と。」





私は顔をこわばらせる。

遊馬と雅も目を見開いた。


…と、次の瞬間。

紺は私の腕を、ぐっ!と引っ張った。

ぐらり、と視界が揺れる。


「きゃ………!」


「詠!!」


「佐伯!!」


次の瞬間

私の体は紺とともに、その場から消えたのだった。



*第5章・完*