百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



そこに立っていたのは

紫色の着物を着た、葛ノ葉 紺だった。


っ!


急いで扉を閉めようとすると

紺が、鋭い爪の生えた手で、ガッ!と玄関の扉を掴んだ。

強い力で押さえつけられ、扉を閉めることができない。

ミシミシ…、と扉が軋んだ。


「…つれないですねぇ…。

お話ししましょうよ。」


紺が、ニヤリ、と笑ってそう言った。

細く閉じられた瞳に私は、ぞくっ!と震える。


「いや!離して!!

あんたの顔なんて、見たくない!」


…遥を殺そうとしてる奴の話なんか、聞き
たくない!!


すると、紺がすごい力で扉を押さえつけた
まま、私に言った。


「いやぁ、初めて知りましたよ。

“加護者同士は、離れていてもお互いの状況がわかる”って。

…遥君は、そんなこと一言も言ってくれませんでしたからねぇ。」