百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



……そうだ!


紺の狙いは、僕を詠ちゃんから離れさせて、その隙に詠ちゃんを捕らえることだ。

僕は急いでスマホを手に取り、相楽くんに電話をかける。


プルル…プルル…


一定間隔で機械音が鳴り

三コール目で、電話が繋がった。


『もしもし、周?

そっちは大丈夫なのか?ケガしてないか!』


スピーカーから聞こえる相楽くんの声に

僕は早口で答える。


「僕は大丈夫、八雲は倒したよ…!

…それより、詠ちゃんだ!詠ちゃんは今そこにいる?!」


すると、相楽くんがスピーカーにしたのか、雅くんの声が聞こえた。


『こっちは、今、アパートに詠を送り終えたとこ。事務所に向かって帰ってる。

詠とは一緒じゃないけど…詠は一人じゃないし、大丈夫みたいだよ。』


……え?

…“一人じゃない”…?


僕は嫌な予感を胸に、尋ねた。


「相楽くんと雅くんは一緒にいるんだろ?

詠ちゃんは、アパートに送ってきたんだよね?」


すると、相楽くんが僕の言葉に答えた。


『アパートを出る時に、ちょうど佐伯の親父さんと会ったんだよ。

佐伯も家族となら安心かなって思ってさ。』


……!


僕は、その言葉に素早く叫んだ。


「詠ちゃんの親父さんは亡くなってるんだ!

そいつは、紺の変化だよ!紺は、詠ちゃんを狙ってる!

詠ちゃんが危ない!」


『!』


電話の向こうで、二人が絶句したのが
伝わった。


「急いでアパートに戻って!

僕も芝さんとアパートに向かう!」


僕はそう言って電話を切ると

芝さんを抱き上げて、逢魔街十三番地から
走り出した。



《周side終》