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《周side》


『…あの…本当にすまんな、周…。

悪気はなかったんじゃ。ただ…桃色の空気につられて…。』


カンパニーに向かう途中の並木道。

芝さんが、僕の腕の中で申し訳なさそうに
口を開く。


「…いつから聞いてたんですか?」


僕が小さくそう尋ねると
芝さんは目を泳がせて答えた。


『…いつから…と、言われてものぅ…。

言うならば最初からじゃ。』


……だよな。


芝さんがあの場にいたってことは

僕が詠ちゃんと事務所を出た時から
すでに尾行されてたってことだ。


……あー、もぅ…。


詠ちゃんと九条のこと考えてて
芝さんの妖気に全く気づかなかった。


僕は芝さんをぎゅっ、と抱いて言う。


「相楽くんに乗せられたからって、こういうことは、もうやめてくださいよ?

…僕は、自分のことでいっぱいいっぱい
なんですから…。」


すると、僕が少し顔を赤くしたのに気づいた芝さんが、こっそりと尋ねた。


『……照れてるのか、周?』


「…怒ってるんですよ、僕は。」