百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


事務所で闇丸が映し出した、遥と凛さんの姿が頭に浮かぶ。


……遥は、きっとここに来ない。

嫌でも、凛さんとの最後を思い出すから。


……幸せな記憶が、溢れてくるから。


きっと、辛くて、ここには来れない。


私は、ベンチの上の木々を見上げて言った。


「遥……すごく優しい顔してた。

…二人とも、すごく幸せそうだった。」


周くんは、黙って私を見つめた。

私は、まっすぐ空を見つめて、ぽつり、と呟いた。


「…すごい、伝わってきた。

…遥、凛さんのこと、大好きなんだなーって……。」


「……詠ちゃん……。」


春も、夏も、秋も、冬も。

ここには、遥と凛さんの大切な思い出がたくさんあって。


…ちょっと見ただけでわかるぐらい、お似合いの二人だった。


………


何でだろう。

どうして、胸がこんなに苦しいんだろう。


……ダメだ。


自分でも、何だかわからない感情に押しつぶされそう。


私は、ぱっ、と周くんを見て言った。


「…休憩取ってくれて、ありがとう。

そろそろ行こっか…………」


私が、小さく笑ってそう言った時だった。