暗い路地裏で初めて言葉を交わした二人。
じりじりとした日差しの中、ベンチで言い合いをする二人。
紅葉を舞わせる風に吹かれ、お互い寄りかかりながら目を閉じる二人。
冷たい銀の世界で、並んで肉まんの湯気に笑う二人。
泣いている凛。
呆れている俺。
笑っている凛。
そっ、と微笑む俺。
いろんな記憶が切り取られ、その瞳の中に浮かんでいた。
「…こんなところも見てたのかよ。
……趣味悪いぞ、お前。」
俺は、静かに闇丸を見つめ続けた。
…こいつも、紺から解放しねぇとな。
俺は小さな箱を取り出して、闇丸の体を、そっ、と持ち上げた。
「…窮屈だけど、我慢してくれな。
あの狐野郎に見つかると面倒だ。俺が逃がしたことにしてやるから。」
凛が研究所で死んだという証拠を持ってる闇丸を、紺は消そうとするかもしれない。
……こいつを殺させはしない。
ヘタに逃すと、紺はすぐに勘付いて殺しに行くからな。
閉じ込めて隠すのはかわいそうだけど、俺の目の届くところに置いて置かないと…。
俺は、闇丸を優しく箱の中に入れた。
そして、小さく呟く。
「お前が見張るべき奴は、もういないよ。」
────カコ。
俺は、静かに箱の蓋を閉じた。
すべての、凛との記憶も悲しみも
箱の中に一緒に閉じ込めた。
*追憶の物語・終*



