百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



“さいご”


その言葉は、俺の心臓を一突きにした。

そこから、見えない痛みが全身に広がる。


「…何言ってんだよ…バカ。

やりたいことたくさんあるんじゃねぇのかよ!俺はあるよ!凛と作りたい思い出いっぱいある!」


どんどん呼吸が小さくなっていく凛の姿が、俺の心を締め付けた。


……なんでだよ。

……なんで、こんなことになったんだよ。


凛は、今日で自由になるはずだろ?

周と幸せになるはずだろ?


………なんで……………


その時、凛が優しく微笑んで言った。


「……はる………わたし……も……

………はる……と……………」



───ぷつん。



その時

意識が途絶えた感覚が、腕の中の凛から俺へと伝わった。


…………


…………凛?



「……凛?…なんだよ?

……俺と、何したいんだよ?」



……。


その問いかけに、返事が来ることはなかった

無意識に、涙が頬をつたった。


凛の死を受け入れたわけじゃない。

まだ、死んだとは思ってない。


なのに

なぜか、俺の涙は止まらなかった。


何も考えていないのに

悲しい、とも思っていないつもりなのに


俺の体が、脳が

勝手に“凛の死”を認めたように動いて。


「………俺……何だってやるよ……?

凛………言えよ………早く……言って?」


凛は、まるで夢かのように、眠るように

俺の腕から温もりを消した。